2013年06月18日

おもしろい民話

長崎の小浜(おばま)に行ったときに、温泉宿に「絵本 おばまの民話」という本が置いてありました。(発行 小浜町 小浜町教育委員会)
地方の民話っておもしろそう〜と思って読んでいて、すごいのに当たりました。

タイトルは「エビとフグとタコ」。
「昔、エビさんが 曲がった腰をなんとかのばせないものかと思って、小浜温泉に 湯治に出かけました。」
という具合に始まります。

えっ、と思いました。ふつう、お風呂のシリーズというのは、「にんじんとごぼうとだいこん」のように、体を洗わなかったからごぼうは体がまっくろ、洗い過ぎてだいこんは体がまっしろ、お風呂につかりすぎてにんじんは体がまっか、というふうに、なぜその野菜がその色かという説明になっているはずです。

この物語は方向が逆なわけです。エビが曲がっている体を治したいという。
エビがお湯に入ったら、ゆだっちゃうんじゃ…ゆであがっちゃうんじゃ…という不安もよぎります。

そこへ仲間が登場。フグがやってきて、温泉で細い腹を太くしたいと言います。
さらにタコがやってきて、温泉で足にイボができたのを落としたいと言います。
さらに「豆腐のカス」がやってきて、こう言うのです。
「おら、粉になっちょるけん、また、元ん豆な ならんじゃろかと 思ち、湯治行きよっとばない。」

「豆腐のカス」って「おから」ってことでしょう。
温泉に入ったからといって、豆に戻るのは、むりだよ。
それより、溶けちゃうよ。
「豆腐のカス」の状態で歩いているのが奇跡なんだから、その奇跡をキープしたほうがいいよ!

crow.jpg


さて、物語は四者が温泉に向かうところで、カラスが登場します。
カラスは、エビに何か芸をしてみろ、と挑発します。エビはできないといって断ります。
カラスは、次はフグに芸をしてみろと言います。フグも断ります。
タコは、木に登って一本足でぶらさがり、「しだれ柳ばなーい。」といって、芸を見せます。
そして「最後は、豆腐のカスさんの番です」って、豆腐のカスに芸とか…むり。

もう、読んでいてハラハラします。
豆腐のカスは「おら、粉に挽かれとっとじゃるけん、なーんもできんと。…」と断りますが、カラスに食い下がられ、歌を歌って勘弁してもらい、物語は終わります。

いやーすごい。タイトルで「エビとフグとタコ」といっておきながら「豆腐のカス」が出てくるところもすごいし、「豆腐のカス」が湯治に行って豆に戻ろうとするという発想がすごい。
この民話集は、他は「ああ、ありそうだな」という聞いたことがあるような、読んだことがあるような話が多いのですが、このおはなしだけ、異彩を放っていました。
こういう無理な話を読ませてしまうのって、すごいなあ。そして、それを大事にしている地元の方たちがすごいと思います。

理屈が通った話というのは、頭で納得できるような気がするけれど、なんだか身体は納得していない場合があるような気がします。このおはなしは、キャラクターがみんな控えめで、自信がなさそうに描かれていて、そこがとてもいきいきしているのです。カラスが意地悪なのは、権力者の象徴かもしれませんが、みんなの対応がとってもけなげ。タコの「しだれ柳ばなーい」なんて、かわいげが漂います。

起承転結とか、どんでん返しとかなくっても、こういうキャラクターの感触を読ませるというのもいいなあと思ったのでした。

今日は、これでおしまい。



posted by ふう at 09:58 | Comment(0) | おはなし | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年06月06日

光をつかまえる

蛍の季節です。
蛍を見る、というのはすっかり珍しいイベントになってしまっています。

わたしの蛍体験は、一度だけです。
山口県の長門湯本(ながとゆもと)にある温泉宿に泊まったとき、ちょうど蛍の見ごろでした。
宿を出て川沿いに出ると、ふわ〜っと光が飛んでいました。
蛍の光は、ペカペカしていないからきれいなんでしょうね。ついたり消えたりが実にやわらかいのです。しかも、蛍の飛び方が曲線で無軌道ですから、なおさら幻想的です。

きれいだね、きれいだね、と言って歩いていると、橋の上でおじさんが近づいてきました。
「手を出して」
と言われ、わたしが言われるままに手を出すと、おじさんは自分の手のひらの中にいた蛍を、わたしの手のひらの中に移しました。
わたしは、手でかごをつくるようにしてそれを受け取りました。
「あげる」
とだけ言って、おじさんはそのまま行ってしまいました。
うつくしい贈り物です。

hotaru.jpg


わたしは、手のかごの中の蛍を見つめました。
おしりが、2秒間隔で光っては消え、光っては消えしています。
近くで見ると案外その光は人工的な感じです。

おじさんは、少年のように幻想の光をつかまえたい、と思ったのでしょう。
そして、光をつかまえた瞬間は喜んだでしょう。
でも、つかまえたものは、つかまえるという欲望を吸い取ってしまう、はかない光だったのです。

わたしは手を開いて、蛍を逃がしました。
わたしから離れると、蛍はまた幻想的な光をともしてふうわりと飛んでいきました。

蛍の話題がテレビのニュースで流れると、少しの間だけわたしの手の中にあった、うつくしい贈り物のことを思い出すのです。

今日は、これでおしまい。
posted by ふう at 11:37 | Comment(0) | おはなし | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年05月22日

ポストはだれのもの?


ポストは赤い色をしています。
だから、道を歩いていても、自転車で走っていても、
姿が目に飛び込んできます。

なかなか自己主張が強いもの、と思いきや、
あれはポストを探している人のために、赤いのです。
あの赤は早く手紙を出したいと思っている人への、思いやりの赤です。

自分の住んでいる町の記憶というのは、
わりとぼんやりしたものですが
(だって、どの家の横にどの家が並んでいるかなんて、
けっこう適当に思い浮かべるでしょう)
ポストのある場所は、ぱりっと記憶されているものです。

ポストは誰のものでしょうか。
もちろん、日本郵便株式会社のものです。
でも、みんなが利用します。
だから、どの人も、あの赤いぽちっとしたポストの場所の記憶を
頭の片すみに持っているんじゃないかと思います。

個人的な意見ですが、ポストからは、まじめな印象を受けます。
時間どおりに郵便局の人が取りに来るのを待ちかまえているからか、
最近のポストは四角いからか、
いつも同じ場所に立っているからか、わかりません。

でも、ある晩、いっせいに飛び上がるような気がします。
竹とんぼのように、頭が重くなっているというのは、
飛ぶのに適していると予想できるからです。

しかし、飛び方もまじめでしょう。
好きなほうに行ったりはしません。
予定したコースを、予定した速度で、予定したとおりに飛ぶのです。

しかも、まったく同じところに見事に着地!

あなたが今日見かけたポストも、昨夜は飛んでいたかも
しれませんよ。

今日は、これでおしまい。
posted by ふう at 19:49 | Comment(0) | おはなし | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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