2013年05月09日

髪の毛が妙にまっすぐになる美容院の話


美容院へ行ってきました。
この美容院が不思議な美容院なのです。
ホニャ沢(ほにゃさわ)さんが一人でやっています。

ホニャ沢さんというのは本当の名前ではありません。
会計のレシートにきちんと担当:■沢紗江子、と名前が書いてあるのですが、
この■のところの文字が難しくてわたしには読めないのです。

いつも帰ったらこの字の読み方を調べようと思うのですが、
この美容院が少し遠くて、電車に揺られている間に、
調べようと思ったこと自体を忘れてしまうのです。
だから、わたしは心の中でこの美容師さんのことをホニャ沢さんとよんでいます。

koushi2.jpg

「ひとりでやってらっしゃるんですか?」
と一度聞いたことがあるのだけど、そのときは他にスタッフがいるようないないような返事でした。

完全予約なので、お客もひとりです。
なのに、美容院全体はとてもひろくて、6〜7人はゆったり入れる規模なのです。
その空いた席にはぬいぐるみが座っています。

その美容師さんは、とても腕がよくって、わたしの長年の苦しみを救ってくれた人でした。

本人の性格に似て、手のつけられない髪でした。
ひどい天然パーマで、ストレートパーマをかけても、2〜3か月したら、
生命のよろこびをすぐに歌いだすんです。
よろこびいさんで、ぐるぐる回りだすんです。

前に行っていた美容院でいつも担当してくれていた美容師さんは、わたしの髪を見て、触れて、
「ふつう、じゃないね」
と言っていました。

nuigurumi2.jpg

でも、このホニャ沢さんは、違っていました。
初めてストレートパーマをかけてもらいに行ったとき、まずわたしの髪をじーっと眺めました。
そして、細くて長い指で根元から毛先までゆっくりとすべるように触りました。

それから、念入りに薬を選んで、髪につけていきました。
コテで伸ばしたり、洗ったり。また薬をつけたり、伸ばしたり。
さあ、3時間たったら、できあがりです。

その仕上がった髪の、うるつや具合といったら!
自分の髪に触れてあれほど驚いたのは初めてでした。

ナンデスカコレハ。コノウルツヤノカミハ。
「あなたの髪ですよ」
とは、ホニャ沢さんは言いませんでしたが、あのギリシア神話の神々のごとく自由で奔放な髪を
おとなしくさせてしまった技術に、わたしはうなりました。

もっと驚いたことに、そのまっすぐ具合が持続するのです。
たいてい1か月くらいすると、毛先がはねだしていたのに。

あの人は、魔法使いなんじゃないでしょうか。
いや、プロ、とはこういうのを言うのでしょう。まるで違う次元に、人を連れて行ってくれる人。

こういうわけで、わたしはそろそろ魔法が解けてきたなー、と思ったら、
あの美容院に行って、ぬいぐるみに混じって、3時間の魔法を楽しむのです。

今日は、これでおしまい。


posted by ふう at 21:46 | Comment(0) | おはなし | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年04月30日

宝くじを必ず当てられる男に出会った話! なぜわたしは宝くじを買わなかったか。

宝くじを必ず当てられる人はいるでしょうか。
わたしは「必ず当てられる」と言う人に出会ったことがあります。
今日は、そのおはなしをします。

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01 出会い

 わたしは、いつもぼんやり歩いているので、よく人に声をかけられる。
 キャッチセールスもそうだけど、道がわからなくなった人とか、自分の話を聞いてほしいだけの人とか。
 とにかく、話しかけやすい顔をしているんだと思う。

 その日は、デパートの催事場で骨董市をやっているというので、足を運んだのだった。
 古びた食器やら掛け軸やらを眺めているときに、エスカレータで上がってきたおじさんに呼び止められた。
「あなたは、ロト6というのを知っていますか?」

 わたしは、何か探している骨董品の場所かなんかを聞かれるのだと思ったので、おじさんの言葉が聞き取れなかった。
「え?」
「ロト6って知っている? 宝くじの一種で、6つの数字を選ぶやつなんだけど」
「ああ! それ、好きで、ときどき買ってますよ」
「あのね、私は、当たる数字が分かるんだ」
「……」

 おじさんは、とても早口に言って、あわてて胸のポケットから黒く光る手帳を取り出した。
「私が言う数字を買ってくれない? それは必ず当たるから、二人で山分けしよう」
「えっ、じゃあ、自分で買えばいいんじゃない?」
「あなたは、ロト6に当たる顔をしてるんだ! 私は数字しか分からない。でも、私が買っても当たらないんだ」

 わたしは、おじさんの言っていることが分からなくなって、おじさんに連れて行かれそうになるのも怖くて、「いりません」と言って、その場を去った。

onna3.JPG

02 考察

 この話を他の人にすると、必ず「買えばよかったじゃない!」と言われる。
 ひとりめは、冗談だと思った。だけど、次にこの話を聞いた人も、その次にこの話を聞いた人も、「買えばよかったじゃない!」と言う。

 わたしは、自分の判断は間違ってなかったと思っていたけど、みんなにそう言われるのなら、自分の判断が違っていたのかなーと思った。

 そこで、考えてみた。
 わたしは、宝くじが当たったところで、おじさんともう一度会わないといけない。そのためには、メールアドレスを交換するなど個人の情報を知らせないといけない。それは嫌だ。
 が、おじさんと二度と会わないで、宝くじを山分けする方法があったのだ。

 おじさんが言ったことを整理すると、

1、おじさんは、当たる数字が分かる。
2、おじさんが買うと、当たらなくなる。
3、わたしがおじさんに教えられた数字のくじを買うと、当たる。


ということだった。

 このくじを1枚買うからいけないのだ。
 おじさんが言った数字のくじを、わたしが2枚買えばいい。
 ロト6は、1等が2名出れば、当選金額が山分けされて支払われる仕組みになっている。

 つまり、同じ数字を2枚買って、お互いに持っていれば、条件の1〜3がすべて整い、しかもわたしとおじさんは次に顔を合わせることなく、当選金を手に入れられるのだ。

03 わたしの出した結論

 なーんだ、わたしが話した友達は、こういうことを瞬間に理解して「買えばよかったじゃない!」って言っていたのか。
 だけど、わたしは、またあのおじさんと会って、同じ話を持ちかけられても、やはりくじは買わない。

 なぜなら、そのおじさんは、ソフト帽をかぶって、ベージュのマフラーをして、紳士に見えたけれど、色が妙に青白くて、とても鋭い歯をしていたから。

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自分で体験したことと、その後に考えたことをお話ふうに書いてみたよ!

今日は、これでおしまい。
posted by ふう at 00:04 | Comment(0) | おはなし | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年04月21日

鹿にまじる男のはなし

「御伽草紙(おとぎそうし)」に、えっと思うような話があったので、意訳してみました。

鹿にまじる男のはなし
剡子(ぜんし)というとても親孝行の男があった。
その両親が、ある時、そろって目を病んだ。
人の話によると鹿(しか)の乳が目の病に効くという。
剡子はそれを聞いて、ならば得ようと思い立ち、鹿の皮をかぶって鹿の群れにまぎれこんだ。
運悪く、そこに猟師が現れた。
彼は剡子をほんものの鹿だと思い、ぎりぎりと弓を引き絞ってねらいを定めた。
剡子はあわてて立ち上がり、
「ちょ。待って。鹿じゃないって。
親がね、親がね、いろいろ事情があるもんだから。
こうして鹿のかっこうをしちゃってますけど」と、さけんだ。
猟師はおどろいて、くわしいわけをたずねた。
剡子はこうこうこういうわけで、鹿の皮かぶってましたと話してやった。
こうして剡子は、猟師の矢からのがれ、無事に家に帰ることができたのだった。
zenshi.JPG

いろいろ、おかしいですよね。
剡子は、何をやってるんでしょうか。
しかも、そんなおかしいのがまぎれこんでいるのに、鹿たちは何をやってるんでしょうか。
最後、鹿の乳はどうでもよくなってますしね。
この話はもともと中国の二十四孝(にじゅうしこう)という親孝行ベスト24の話だとか。
こういう話がランキングする大陸のおおらかさ。
posted by ふう at 13:57 | Comment(0) | おはなし | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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