2013年06月26日

ちはるさんが、関根くんをつかまえます(中編)

前編を読んでない方はまず、こちらへ⇒ちはるさんが、関根くんをつかまえます(前編)
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お昼になりました。さあ、ちはるさんは席でお弁当を広げました。
「あれ、料理とかつくるの」
と、関根くんが聞いてきました。さっそく手ごたえありです。「むし図鑑」のいうとおり!
「うんまあね」
「へえー」

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ちょっと沈黙があり、関根くんがちはるさんの料理のうでをうたがっているのではと、ちはるさんはどきどきしました。
「家に、ゴマ油とかある?」
「……ない」
「ふうん」
と、関根くんは外に食べに出かけてしまいました。なんだか、とっても失敗をした気分です。
ゴマ油で、何がわかるっていうんでしょう! 料理をする人かしない人か、料理がじょうずな人かそうでない人か、判断できてしまう魔法の質問なんでしょうか。
だとしたら、ちはるさんが料理をあまりしないこと、そしてそれほどじょうずではないことが関根くんにばれてしまったかもしれません。
ちはるさんは、落ち込みました。 

でも、次の日も、お弁当をもっていきました。すると、今度は、
「ねえ、ゆず胡椒(こしょう)とか、もってる?」
と関根くんは聞いてきたのです。そんな、聞いただけでくしゃみがでそうな調味料、ちはるさんは知りもしません。

 spice.jpg
が、はっと気がついたのです。関根くんは、もしかして料理が得意なんじゃないかと。
料理が得意な人に料理ができることをアピールするのは、それは本当は得意ではないからなおさらですが、ぐの骨頂です!
とっさに、
「そうだ、池袋にすごいお店見つけたんだ」
とちはるさんは言いました。
「へえー、じゃあ連れていってよ」
と関根くんは答えました。ちはるさんの心のなかは、ぴょんぴょんはねました。 

「すごいってどうすごいの?」
「それは……ないしょ」
こうして、ちはるさんは、その週の金曜日に関根くんとデート? することになったのです。
もちろん、ちはるさんは、会社から出て電車で帰る途中、もうスピードでスマホを使って「池袋」「すごい店」というキーワードでGoogle検索したんですけどね。

 さて、かんじんのお店ですが、池袋にあるすごいお店には、舌がとろけてなくなるというイタリア料理屋さんと、ずいぶんお魚がおいしいと評判の居酒屋さんがありました。関根くんは、「ゆず胡椒」を使うくらいですから、和食が得意そうです。いつも和食を食べつけているから外食は洋食がいいのか、やはり外食も和食がいいのか、ちはるさんは迷いに迷いました。
ここはいちかばちかです! ちはるさんは、お魚がおいしい居酒屋さんのほうを選びました。
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後編へつづく ⇒ ちはるさんが、関根くんをつかまえます(後編)

今日は、これでおしまい。


posted by ふう at 10:54 | Comment(0) | お話を作ったよ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年06月25日

ちはるさんが、関根くんをつかまえます(前編)

ちはるさんは、会社の隣の席に座っている関根くんのことが好きです。
関根くんは、営業の仕事をしているのですが、取引先との電話では、いつもちょっと大きなことを言ってしまいます。できますよ、と言って納期が近くなったら大あわて、なんてことはしょっちゅうです。ファックスを送ると送り先を間違えます。さがしている書類はいつも見つかりません。

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ちはるさんは、その横の席で「まただー」「まただー」と気をもんでいるうちに、だんだんと関根くんのことが好きになってしまったのです。
残念なことに、ちはるさんは、恋愛がヘタだとまわりの友だちのだれからも思われている女の人です。

さて、ちはるさんは、なんとか関根くんとおつきあいしたいものと考え、意を決して「むし図鑑」を買いました。その「むし図鑑」には、むしのつかまえ方が、それはくわしくのっていたのです。
男の人をつかまえるのに、むしをつかまえる方法を知って何になるのかと思う方もいらっしゃるでしょう。でも、わたしたちが、本当にちはるさんのことを笑う資格があるのか、すこし検証してみましょう。

ちはるさんは、インターネットで、「男心をくすぐる女のしぐさ10」とか「彼女にしたい女の特徴15」とかの記事をよくながめていました。
ある日、こういう記事を書いている人とはどんな人なんだろうと思って、その記事を書いたライターさんのブログを見たのです。

すると、そのライターさんは、失恋したばかりで、ブログにはかなしい言葉が並んでおり、ちはるさんの心は痛みました。男心をくすぐるしぐさを10しっていても、彼女にしたい女の特徴を15しっていても、うまくいかないのが恋というもののようだと、ちはるさんは思いました。
そして、こういう記事は、本当の恋愛に役に立つために書いてあるのじゃなく、恋愛に興味がある人を楽しませるために書いてあるんじゃないだろうか、とさとったのです。
なかなかの推理です。だって、こういう記事って読んでいて楽しいでしょう。本当に役に立つものって、楽しいというよりは、真剣そのものだったりしますもの。

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だから、「むし図鑑」なのです。これは、楽しませるためじゃなく、本気でむしをつかまえたい子どものために、書かれた本なのです!
ちはるさんは、変わり者ですが、このようなひたむきな考えのすえ「むし図鑑」を手に取ったのです。

ちはるさんは、じっくりと「むし図鑑」を読みました。
そして、大きくわけると、むしをつかまえる方法が3つあることを学びました。

1、卵から育てる
2、えさでおびきよせてつまかえる
3、網などで強引につかまえる

は、もう関根くんは卵ではありませんから、無理です。も危険でしょう。すると、がいちばん、確実!
というわけで、ちはるさんは、手づくり弁当をもって会社に行くことにしました。

もちろん、料理ができるところを、関根くんに知ってもらうためです。といっても、ちはるさんは料理はあまり得意ではありませんから、たくさん調味料を買いこんで、朝早く起きてようやっとつくりあげたのです。

中編へつづく⇒ちはるさんが、関根くんをつかまえます(中編)

今日は、これでおしまい。

posted by ふう at 16:57 | Comment(0) | お話を作ったよ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年06月20日

捨てられそうになったふくろう

会社の先輩の三沢(みさわ)さんが引っ越しするといいます。
可奈(かな)は、自分のことを引っ越し上手と思っていましたので、お手伝いを買ってでました。
整理が済んだ本の梱包(こんぽう)、すぐには使わない食器の梱包、引っ越し上手の可奈にとっては、こんなことお茶の子さいさいです。

三沢さんは、手伝ってくれたお礼に、いらないものの中から好きなものをもっていっていいよと可奈に言いました。見ると、捨てるものの集まりのなかに、ふくろうの置き物がありました。手のひらに乗るくらいの大きさで、かわいらしく首をかしげています。焼き物ですが、いかにもふかふかした白い羽根がじょうずに再現されています。
「じゃあ、これください」
と言って、可奈はふくろうの置き物を手に入れました。
可奈は、家に帰ると、さっそくやわらかい布でできたコースターの上にふくろうの置き物をすえて、サイドボードの上に飾ることにしました。

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さて、引っ越しが無事に済んだ三沢さんですが、このところずっと会社を休んでいます。理由を他の人にたずねても、みんな言いにくそうにしています。どうやら、体調が悪いようです。
2週間ほどして、ようやく会社に出てきた三沢さんですが、こんどは仕事で大きなミスをして、社長じきじきにおしかりを受けたともっぱらのうわさです。
今まで、大活躍だった三沢さんとは別人のようです。

可奈は、ふと、自分がもらったふくろうの置き物のことが頭をよぎりました。
(もしかして……あのふくろうは、福の神なんじゃないかな。それを手放したから、三沢さんは、大変な目にあってるんじゃないのかな……)

家に帰ると、可奈はふくろうをながめました。相変わらず、ふくろうは首をかしげて、どこともない遠いところをつぶらな瞳で見ています。
(このふくろうが福の神なら、これを三沢さんに戻したら、三沢さんは、もとの三沢さんに戻るかもしれない……)
と、可奈は思いましたが、そうすると、可奈はどうなるのでしょう。このふくろうを手放したことで多くの不幸に見舞われるのでしょうか。そう思うと、可奈は足もとがひやっとするのを感じました。さらには、福の神だと思うと、なかなか手放したくなくなるのが人の心というものです。

「そうだ! いい方法がある!」
可奈は、ぱちんと指を鳴らしました。そして、次の日の朝から、このふくろうに、こうお願いをすることにしたのです。
「ふくろうさま、ふくろうさま、三沢さんに幸せがきますように」
手を合わせてそうお願いすると、可奈は会社に出勤します。
すると、失敗続きの三沢さんが、みるみるうちに失敗はなくなり、手がけた商品が大ヒット。社長から、みんなの前で賞をもらうほどになったのです。

(やっぱりあのふくろうは、福の神なんだ……)
可奈はそう思うと、頬(ほお)がきゅっとなって笑顔になりました。
「ふくろうさま、ふくろうさま、世界中のみんなが、幸せになりますように!」
毎朝、可奈がふくろうにそうお願いすると、いつものようにふくろうは首をかしげて、
(こまったなあ)
という顔をしているのでした。

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家にあるふくろうの置き物を題材にして、お話をつくってみました。

今日は、これでおしまい。

posted by ふう at 12:16 | Comment(0) | お話を作ったよ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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